麻雀のプロ。
そんなものがあるとは知らなかった。
将棋やチェスのように、同じ陣形から勝負が始まる。
又は囲碁やオセロのように、何もない盤上からゲームが始まる。
これなら、先手後手の有利不利はあれど、入れ替えれば公平だ。
だが、麻雀は違う。配牌で和了っていれば素人でも勝てる。そういうゲームだ。運の要素が強すぎる。
「運の太ぇ奴が勝つんだよ」
そんなセリフがあったような…
だが、回数を重ねれば、数字という抗えない結果となって表れるのも確かだ。
確率の収束と同じで、正しい打牌選択が結果を生んでいく。それが、このゲームの面白いところだ。
「今日、麻雀しようぜ」
大の大人が仕事後に、或いは休日に雀荘へ行って卓を囲む。
コミュニケーションツールとしての側面もあるが、何より、面白いからこそ人が麻雀を覚え、腕を競っていこうとそれを磨いてきた。そして頂点を決めるべくタイトル戦があったり、ネット配信でその磨いた腕を披露する等、商業的な側面でも認知されつつある。
大富豪や七並べなどのカードゲームも運の要素の強い面白いゲームだが、プロというのは聞いた事が無い。
実際、麻雀というのは敷居の高いゲームだと思う。
例えばポーカーと比べると役の数が桁違いだし、牌の種類も多い。ルールも統一されている訳でなく、フリテン、ポンチーカンの発声など、全く0の初心者が越えるべきハードルは高い。
だが、越えれば面白い世界が待っているー
そう、巷に雀荘という形の商売が成り立っている訳だから、面白くない筈が無いのだ。
(面白そうだ。挑戦してみるか)
フリー雀荘やネット対戦での成績はなかなかだと思う。
「下神君、強いねぇ」
そんな声を何度も聞いた。
(どこまで自分が強いのか、試してみたい)
日に日にその想いが強くなり、ついに決断した僕は、プロ試験に合格したこともあり、会社を辞めた。