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「オーナーの山田です。よろしく」

「よろしくお願いします」

「下神将太君は、アルバイト希望?それとも、スタッフ希望?」

テーブル代わりの麻雀卓で向かい合い、面接が始まった。
履歴書を見ながら、山田オーナーは最初にそう訊いた。

「えと、できればスタッフとして、働きたいのですけど…」

事前にホームページで調べた募集要項には、住み込みも可と書いてあった。
会社を辞めてまで働くのだから、アルバイトというつもりはない。

「そうか…」

オーナーは、少し難しい顔をした。

「正直、ウチも厳しいからね…。そんなに出せないけど?」

「はあ…」

厳しい環境だという事は承知している。僕は、続く言葉を待った。

「こっちで住むつもりなの?」

「はい」

「じゃあ、このビル、上が住居だから。そこに住めば良いよ。気に入ればだけど。
で、家賃は出してあげる。給料は、生活できるくらいは払うって形でどう?」

「あ、はい。それで大丈夫です」

衣食住。とりあえず住む場所が確保されるのは有難い。
部屋次第ではあるが、不動産屋との交渉、敷金礼金の支払い等、初期費用が抑えられるのも助かる。
僕は、二つ返事で了承をした。

「雀荘のスタッフなんて…まあ、厳しいからね」

「そう聞いてます」

「あ、ある程度は知ってるんだ」

「はい…いろいろ、話を聞いてるので」

「へえ…」

「アウトで飛んだとか、スロットで稼いでるとか…」

「まあ、場代負担のお店はそうだろうね」

オーナーは、目尻を下げて、笑いながら言った。

「そう思います…」

「まあ、ウチは場代無料だし、そういう事はしたくないから」

そう話す言葉には、矜持みたいなものも見えた。信頼しても良さそうだ。直感ではあるが、素直にそう思った。

「定休日とかないけど、土日は出れる?」

「あ…すみません。自分、麻雀のプロで。リーグ戦とかが土日にあるんです。それで、その時はお休みを頂きたいのですが…」

こればかりは仕方がない。僕は、正直に言った。

 

「麻雀プロ?」

オーナーの声色が、少し変わった気がした。

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*物語はフィクションです。実際の団体、店舗及び個人名は実在致しません キリ